首から肩にかけての筋肉の「頑張りすぎ」 私たちの頭は、ボーリングの球一つ分ほどの重さ（約5～6kg）があります。デスクワークやスマートフォンを長時間見ている時、その重い頭を支えるために、首から肩、背中にかけての筋肉（特に僧帽筋など）は常に緊張を強いられています。本来は全身でバランス良く支えるべき負担が、この部分に集中してしまっているのです。この状態が、まさに筋肉の「頑張りすぎ」。この過剰な働きが、血行不良を引き起こし、頑固なこりや痛みの直接的な引き金となっています。

では、なぜ首や肩の筋肉だけが「頑張りすぎ」てしまうのでしょうか？その背景には、本来働くべき筋肉が「サボっている」という問題が隠されています。特に、肩甲骨を正しい位置に安定させるためのインナーマッスル（菱形筋や前鋸筋など）が、長年のデスクワークなどで正しく「使えていない」状態になっている方が非常に多いのです。この重要な筋肉たちが「お休みしている」ため、その仕事を補うために、アウターマッスルである首や肩の筋肉が、必要以上に頑張らざるを得ない状況に陥っているのです。

頑張りすぎる筋肉と、サボっている筋肉。このアンバランスな状態が長期間続くと、身体は猫背や巻き肩といった歪んだ姿勢に傾いていきます。そして、最も厄介なのが、脳がその歪んだ姿勢を「これが普通の状態だ」と認識してしまう「脳の勘違い」です。脳に「間違った学習」がインプットされると、無意識のうちにその悪い姿勢に戻ろうとする「悪いクセ」がついてしまいます。これが、整体やマッサージで一時的に姿勢を整えても、すぐに元に戻ってしまう根本的な理由なのです。この「形状記憶」こそが、再発を繰り返す最大の敵と言えるでしょう。